3DCGに拠る漫画の背景作成■
誰もが考えると思われる、
漫画の構成要素の作成作業のデジタル化は本当に恩恵をもたらすんか。 ほんまか!?





 

 何年前かは忘れたが、 myShade購入後、チュートリアル本を片手に基本操作を覚え、見切り発車的にモデリングを始める。
 SF的なモチーフは造形するしか手がない。 参考資料は皆無で、…当たり前だけど、ぽろぽろ作ってても意味がないなと思った私は一本ねたを選んで連作することにした。 タイトルは「クリプレッド・モード」。 コンピューター用語で、フェイルセーフのことらしい。 要するにシステムが故障したときに肩代わりする予備システムを作っておくという概念で、このネタの根幹でもある。 
 モデリングと関係ないので、筋などは別記する。 


 モチーフは東京湾に設立された海水発電装置で、とてもでかい。 手書きでも描いたのだが、しっくりこない。 割と無謀というか無策である私はモデリングを始める。 外観としては、原発とか海浜の石油コンビナートとかとあまりかわらないだろう。 ということでマスターオブジェクトのないこのころ、全部コピペで回転させてつくる。割と本体はすぐにできたのだがここからが大変だ。 周りのビル郡とかハイウェイ。 ふもとのディテール。 結構つくりこんでいったのだが、一ヶ月にもなるころさすがにへたってきて、トリムを多様し始める。 






  もともと白黒画像用なので、色味は心配要らないが、トーンの問題で悩みが出る。 線画抽出してトーンを改めて貼り込むかこのままトーン処理まで写真屋で処理するか。 作風にかかわるのでずいぶん悩んだ。 リアルすぎるのだ。 そのままやるとキャラクターとつりあわなくなるので、 幾分解像度を落とす必要もある。 なんでここで画質を落とさなきゃならんのか矛盾に苦しむ。 


  しかし、この画像一枚で一ヶ月かかっている。 実時間はもっと短いのだけど、プロだったら実用性はない。 三時間ぐらいでめどが立たなければだめだ。 扉用で一枚ものとしても処理しなければならない背景は相当数ある。 そして、このペースは一向に変わらないようだ。
続く  前述の著作権の問題もあり、これの加工もはんぱではない。
 地図をネットでひろい、輪郭を抽出。 別の航空写真を加工し、貼り付けた後、ブラシでいじり倒す。 その後またフィルターをかけ、オリジナルとまったく似ても似つかない代物をつくりつつ、なおかつ現実っぽくつめていくという、なんなんだこの遠回りはf(^_^)。
 肝心の中央部先に述べた潮流発電の高高度ショットで、この漫画のひとコマ目になる。 上の絵は四枚目の絵ね。 二枚目の中間距離でのショットもあるが、未完成だ。
 この画像の人工島はモデリングと張り込みでできている。ちょっとアップにしたのが下の画像。






このコマが三コマめで、最初の一ページの構成要素となる。
 手間がかかるが効果はでかい。 航空写真の細切れを張り込んでいるだけあり、本物っぽい感じもする。  トリムを使えば、細かい影もおちて、ますます箔がつく。 立体感がでるのだ。 基礎になるモデリングの部分はとてもちゃちなのだが、結構アイデアで切り抜けられるかも。 しかし、ここでも時間の問題がおおきい。 試行錯誤を繰り返したせいもあるが、やはり時間とられすぎ。二週間以上かかっている。 一コマに二週間はきつすぎる。






コレは何かというと、海水発電翼、かなりデカイ設定。 主人公が落下するエレベーターの中から垣間見るショットのためモデリング。
物語のクライマックスで、支柱が折れ、頭上二百メートルのところから落ちてくる。 …壊れるシーンとか考えるだけで頭が痛い。


 

※別記のあらすじ。 読んでもしょーもない。
 五十年ほどの未来。
東京湾に設立されたベイシークエンスポート、 潮流発電システム「セレン」。
 このシステムは潮の満引きと海水のイオン分解によるクリーンな発電と、関東一帯をまかなえる能力をもち、夢の次期エネルギーとして期待され、建造されつつあった。 羽田ニューポートに到着した愁香は、警視庁から迎えに出た刑事と合流。グリッド12へむかう。 グリッドとは発電システムの支柱のひとつで、 巨大なドーム状の建物の中に海水をひきこみ、 発電翼を回転させる設備だ。 ここに追跡中の工作員が侵入した可能性があり、 彼女はこの男を追っていたのだ。 十二時間まえ、フランスのセレン支部より、セキュリティシステムのコードが盗み出されたことにより、愁香の属するSSPPIが捜査を開始する。 盗まれたコードは、発電システムの安全装置に障害を発生できるものであり、ここにおおきな謀略が隠されていた。



 結論。 手で書いた方が早い。 今のところ。 まだ。 先はわからないが。 
 コレを多人数でそこそこのスタッフでやるならば、プロの漫画家のストレスは半分になるかも。 ただし、労力はかわらない。 エネルギー保存の法則(笑)。 同等の結果をだすならば、かかる苦労の数は同じでしょうね。 手を抜く、あるいは手が抜けると思うならば、手法の如何には全く関係ないのです。